犬は人間が飼うように改良を重ねられてきた動物です。とは言え犬の中には全然飼い主の言う事を聞かないワイルドな子もたくさんいます。犬は基本的に群れで生活する動物です。群れには必ずリーダーがいて、どんな動物も自分を守ってくれるリーダーがいてこそ心の安定を保つことが出来ます。しつけが出来ず、言う事をまったく聞かないワンコは心が安定していません。つまり、あなたを真のリーダーとして認めていないので、精神が不安定なのです。
精神が不安定な犬には以下のような行動がよく見られます。
- 無駄吠え
- 甘噛み、本気噛み
- 唸る
- ご飯を催促する
心当たりはありませんか?
こういった犬の行動は自分を守り、導いてくれる群れのリーダーを見つけることが出来ていないから起こるのです。逆に言えばあなたがしっかりと犬のリーダーとして認識されれば、しつけ(リーダーから群れに示したルール)はスムーズに犬に吸収され、無駄吠えや噛みつきを始めとした問題行動は激減します。
ここでは犬のしつけを上手に行うために、どうすればあなたがリーダーとして認められるか?何をするとリーダーとしての尊敬を勝ち取れないのかをお伝えします。
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犬にリーダーと認めさせる方法
犬は本来群れで暮らす動物です。群れには集団を統率し、守るリーダーがいます。犬はリーダーの下でこそ、心の安定を得ることが出来ます。リーダーのいない犬は精神的に不安な状態で、ちょっとのことにも敏感に反応します。チャイムが鳴った時や来客があった時に必要以上に吠えたりするのも不安の表れです。精神的に安定している犬は無駄吠えや噛みつきなどの行動をほとんど起こしません。
つまり、犬にリーダーと認めさせることが問題行動を減らすうえで非常に多くのウェイトを占めます。そして、犬は群れのリーダーが教えるルール(しつけ)ならば、素直に従います。犬にリーダーと認めさせるには犬からの尊敬を得る事が重要となります。
犬は家族が自分にどういう態度で接してくるかで自分の地位を築いていきます。自分のわがままが通る相手なら、自分より低い地位に格下げしようとします。ですから、日々の生活の中で犬に対する一つ一つの行動であなたが優位であることを示していけば、自然と犬からの尊敬を得ることが出来ます。
では、ここからはあなたが犬のリーダーになるために効果的な4つのトレーニングとしつけのときに犬にどのように接したら良いかをお伝えします。
犬のしつけが出来ないのは接し方が間違っているから
犬のしつけが上手に出来ない飼い主の場合はだいたい間違った接し方をしています。
以下に心当たりはないでしょうか?
- かわいい顔でこっちを見ているから思わず頭をなでに行った。
- 犬がボールを持ってきたので遊んであげた。
これはいずれも間違った接し方です。
本来、群れのリーダーが部下にごほうびをあげるのは、リーダーが望む行動をした時だけです。
かわいい顔でこっちを見ているから思わず頭をなでに行った→犬は何もしていないのに、リーダーが「なでるというごほうび」をあげてしまっています。
ボールを持ってきたので遊んであげた→遊んでとボールを持ってきた犬の要求に従い、「遊ぶというごほうび」をあげてしまっています。
1の場合であれば、あなたが犬を呼ぶ(リーダーからの命令)→犬があなたのところに来る(命令に従った)→なでる(ごほうび)なら、問題ありません。
2の場合であれば、あなたがボールを用意して犬を呼ぶ(リーダーからの命令)→犬があなたのところに来る(命令に従った)→遊んであげる(ごほうび)なら、問題ありません。
特に2の場合のように犬が自分の意志でボールを持ってきて遊びを求めた場合、要求に従って遊んでしまうと、犬は自分の主張が何でも通ると考え、いろんな場面で人間に要求するようになります。例えば「ご飯ちょうだい!」とご飯入れをガチャガチャ鳴らして要求したり、散歩の時に「早く!早く!」と人間を引っ張ったりするようになります。これは要求が通ったことで「自分は偉いんだ!」と犬が勘違いしてしまうためです。この状況を放置していると主張が通らない時に、吠えたり、噛んだりなどの問題行動につながります。犬をかわいがる場合はまず、あなたが主導権を握ってからというのが鉄則です。
という私もついつい頭をなでに行ってしまうので、守るのはなかなかに難しいのですが(汗)。でも、犬をなでる時にこちらから犬のところに行くのではなく、必ず犬をあなたのところに呼んで、犬がしっかりあなたのところへやってきたらなでてあげるという事を繰り返すだけで、犬はあなたをリーダーとして認識していくことになりますので、なでたい気持ちをぐっとおさえてがんばりましょう!
犬をしつける時の正しい接し方
犬をしつける時はあなたが与えた課題(命令)に犬が成功した時にほめることが基本になります。つまり、”あなた(リーダー)のいう事を守れば、良い事がある”と認識させることが重要です。これからお伝えする4つのトレーニングも成功した後は必ずほめて下さい。
リーダーのいう事を守る→ほめてもらえるという認識をたくさんの指示で作っていきましょう。
しつけで犬を叩くことはNG
言う事を聞かない犬を叩くのはしつけにおいて何の意味も持ちません。それどころかマイナスです。犬は怒られても反省しません。人間とは違います。「しつけで犬をたたく時はどこを叩けばいいですか?」と聞かれることがありますが、犬を叩くことや犬の体を捻じることは犬に恐怖を植え付けるだけです。体罰による恐怖心はリーダー(あなた)への不信感につながり、顔色をうかがうような犬になってしまいます。
しつけで重要なのは「命令を守らないと嫌なことが起きる」と認識させることです。そのためには天罰方式が有効です。
天罰方式とは?
悪い事をした時に大きな音が鳴ったり、苦い味がしたりすると犬は「こんな嫌な思いをするなら、もうやめよう」と考えます。天罰方式で用意するのは小銭を何枚か入れたアルミ缶(振ると金属音がけたたましく鳴ります)とビターアップルです。犬が悪さをした瞬間に小銭の入ったアルミ缶を振ると、ジャラジャラ音に驚いた犬がびっくりします。そこですかさず「ダメ!」とか「いけない!」と叱ります。これを繰り返す事で犬は叱られる原因となった行動=嫌なことが起きると理解して、しないようになります。いろんなところをかじったり、甘噛みしたりする子にはビターアップルが効果的です。
甘噛みする→苦い味で嫌な思いをする→やめるという流れです。
犬のリーダーになるために効果的な4つの方法
犬のしつけをスムーズに進めるためにはリーダーになる事が必要というのはこれまで述べたとおりです。そして、リーダーになるために、あなたが犬より優位であると示すトレーニングが以下の4つです。
- アイコンタクトのトレーニング
- 服従姿勢をとらせるトレーニング
- マズルコントロールトレーニング
- あなたが遊びに誘い、あなたが遊びを終わらせるトレーニング
では、順にやりかたを見ていきましょう。
アイコンタクトのトレーニング(視線を交わす事で信頼感が生まれる)
あなたが名前を呼べば、犬が常にあなたの目を見るようにするトレーニングです。ポイントは”名前を呼ばれて、目を見つめれば何か良いことが始まる”と犬に認識させることです。
準備するもの:おやつ
- 犬の名前を呼ぶ→目を見てきたらすぐにほめてあげましょう
- 名前を呼んでも目を見てこない場合→あなたと犬の目線の間に手を出す(手に注目させる)→出した手をあなたの目のところまで上げる→あなたと犬の目が合う→ほめる
- それでもうまくいかない場合はおやつを手に持ち、あなたと犬の目線の間に手を出す(手に注目させる)→おやつを持った手をあなたの目のところまで上げる→あなたと犬の目が合う→ほめながら目のところまで上げたおやつをまっすぐ犬の鼻先に出しておやつをあげる
この繰り返しで”あなたに呼ばれた時に目をみれば良い事が始まる”と犬は認識します。犬にとっては本来リーダーからほめられることで充分良い事、うれしい事です。ですから、しっかり、アイコンタクトが出来るようになってきたら、おやつの回数は減らしていきましょう。ずっとおやつを与えていると、おやつなしではアイコンタクトしない困ったちゃんになってしまいます。
服従姿勢をとらせるトレーニング(リーダーに服従する事を教える)
リーダーに対する服従姿勢をとらせることで服従心と信頼関係を養うトレーニングです。服従姿勢というのはリーダーに対して仰向けの姿勢でいる事です。
気を付ける事:子犬ですので押さえる時に力を入れすぎて窒息や骨折などにつながらないよう気をつけましょう。
ポイント:つねに声をかけ、ほめながら服従姿勢をとらせましょう。
- リーダーであるあなたが脚を伸ばした状態で床に座る→脚の間にあおむけの状態で子犬をいれる→あなたの右手であおむけになっている子犬の左前脚を握り、右手首のあたりで犬の右前脚を軽く押さえると、自然と犬の胸を固定しているような形になります
- 暴れてしまった場合は犬を放してはいけません。脚の間に子犬を入れたのは脚で固定するためです。しっかり、脚で固定して放さないようにします。犬が暴れるのをあきらめ、おとなしくなったようなら、3の方法へ移行します。
- 仰向けの状態で暴れずにおとなしくしているようなら、横向きに姿勢を変えます→暴れても対応できるように軽く犬に手は添えておきます。
- 横向きの姿勢で10分を目安に服従姿勢をキープしましょう。キープできないようなら1からやり直しです。
マズルコントロールトレーニング(服従心と引き換えに安心を与える)
母犬は自分の口に子犬の口を含むことがあります。これは母犬が子犬をしつけるときの行動で、”あなたより強い私が守ってあげるから、私の言う事を聞くのよ”という意味があります。このマズルコントロールトレーニングは、”強いリーダーが守ってあげる”という安心感を子犬に与え、リーダーへの信頼と服従心を養うのに効果的です。
気を付ける事:鼻先を包むとき、窒息させないように気をつけてください。
- 子犬に服従姿勢(仰向け)をとらせます。
- 片手を犬の頭の上に軽くおき(頭をなでるような感じ)、もう片方の手で犬の鼻先をやさしく包み込みます。
- 抵抗したらおとなしくなるまで待って1からやり直し。抵抗しなければやさしい声でほめてあげましょう。
- 包み込んだ鼻先を上下左右に軽く動かしてみましょう。抵抗したらおとなしくなるまで待って1からやり直し。
- 上唇を開いて歯や歯茎を軽く触ってみましょう。抵抗したらおとなしくなるまで待って1からやり直し。
- 口をあけてみます。ここまで出来たらやさしくほめながら、ごほうびを兼ねて、あけた口におやつを一つ入れて食べさせてみましょう。これは将来薬をあげる練習にもなります。
あなたが遊びに誘い、あなたが遊びを終わらせるトレーニング(あなたに主導権がある事をはっきりさせる)
ポイント:犬がおもちゃを持ってきたから遊んであげるというのはダメ!
あくまでリーダー主導で遊びを始めて下さい。
- あなたがおもちゃを出し、犬の名前を呼びます。
- 犬とアイコンタクトをした上で、遊びに誘います。
- 遊ぶときは絶対に犬を背中に乗せない事。
たとえじゃれているだけと思っていても、背中に乗せると犬は自分の方が地位が高いと勘違いします。
逆に犬に馬乗りになったりするのは、あなたの地位が犬より高い事を示すうえで効果的です。 - 遊び終わったら、あなたがおもちゃを取り上げて、犬が見ている前で犬が取れないところにしまいます。
これで犬はおもちゃの所有権がリーダーにあり、遊ぶのもリーダーに主導権があると認識します。
犬のしつけは子育てと一緒
犬を家に迎え入れるという事はあなたの家庭のルールに犬を適応させなければいけないということです。犬が好き勝手にやらないように群れの(家庭の)ルールを教えなければなりません。そのために必要なのがしつけになります。迎え入れた犬には、家族に迷惑をかけないように、家の周りの人に迷惑をかけないように、みんなと仲良く出来るようないい子になってもらわなければいけません。
子育ても一緒ですよね。お子様が周りに迷惑をかける困ったちゃんにならないように一般常識を教え、みんなと仲良く出来るように色々と教えると思います。でも、お子様がぐずったり、泣きわめいたりすると忍耐が必要です。そして、時間をかけて納得させていきます。犬のしつけもまったく一緒です。
犬のしつけまとめ
しつけはほめることが基本。
犬をたたく、皮膚を捻じるなどの体罰は逆効果。
叱るときは天罰方式が効果的。
犬に接するときは常にリーダーが主導権を握る事。